1 後継者不在問題
(1) 廃業理由の約3割が後継者難
日本政策金融公庫総合研究所の2023年調査によれば、同年の廃業予定企業のうち、28.4%が後継者不在を廃業理由としています。
企業は雇用や技術の担い手として我が国の経済・産業・文化を支える重要な存在であり、後継者不足による雇用や技術の継承の断絶は、大きな社会問題です。
また、後継者不在による廃業は、企業オーナーにとって、自身が心血を注いだ事業の成長や成果に対する正当な経済的対価を享受できる機会を喪失することを意味します。
(2) 後継者不在の原因
後継者不在のため、廃業を余儀なくされる後継者が多いことは先に述べたとおりですが、後継者不在の原因としては、主として以下の事情が挙げられます。
- 子がいない(適切な他の親族もいない)
- 子が会社の事業に興味がない
- 子に経営者としての適性がない
- 役員や従業員に引き継がせるには様々な困難があり、実現ができない
(3) 経営者が60歳代のときに後継者がいなければ、将来も後継者不在で廃業の危険性大
2023年版中小企業白書では、経営者の年代ごとの後継者不在率を公表しており、60歳代で38%、70歳代で30%、80歳代以上で23%の経営者に後継者がいないことが報告されています。
上記の経営者の年代ごとの後継者不在率と上記(1)の後継者不在を廃業理由とする割合(28.4%)が、概ね30%前後で一致していることから、経営者が60歳代の時点で後継者が不在であれば、当該企業は将来的にも適切な後継者が見つからず廃業に至る危険性が高いと言えます。
2 後継者不在問題の解決策としての会社売却・事業売却
会社オーナーにとって、会社を引き継ぐ後継者がいないという問題は、解決しなければならないこととは認識しつつも、出来れば先送りしたい問題であるかもしれません。しかし、問題の先送りは、結果的に、相続人に問題解決を委ねるという結果になりかねません。これでは、相続人に多大な負担をかけることになるのはもちろんのこと、会社の経営がうまく行かず、廃業や倒産という事態になれば、従業員や取引先にも迷惑をかけることになります。
後継者のいないオーナーが不在となった後も、引き続き会社、事業が存続し、より良い発展を期待することができる解決策として、会社もしくは事業を適切な第三者に売却する方法が考えられます。優良な売り先を慎重に探索し、オーナーがこれまでに築いてきた会社、事業を正当に評価する買主に譲渡することが、問題解決にとってとても重要となります。
これにより、オーナーは潤沢な金融資産を獲得することができます。一方、相続人は、会社を引き継いだ場合には、多額の相続税納税資金を調達する必要性に迫られることになりますが、会社を適正な価格で売却することにより、納税資金不足という相続人が抱える問題からも解放されることになります。
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